派遣求人などを見ていてよく目にするのが、「インバウンド」、「アウトバウンド」という言葉ですが、普段の生活ではなかなか使わないコールセンター用語であるため、馴染みが薄いというのが正直なところでしょう。
意味合いとしては、「インバウンド」が受電、つまり電話を受ける側の業務を指し、「アウトバウンド」が架電、電話を架ける側の業務を指します。
今回は、その業務概要について、コールセンター業界で8年間の勤務実績を持つ私が実際に見聞きした内容を、現場目線からのメリット、デメリットと、それぞれ二本立てでご紹介していきます。
ちなみに、どうせ未経験なんだからと、つい良く知らないまま求人に応募してしまったという話をよく耳にしますが、やはり心の準備をするという面から考えても、どちらの業務も知った上で始めた方が、比較的長続きしやすいというのが私の持論です。
目次
インバウンド業務とは?
インバウンド業務とは、簡単に言うと、電話を架けてくるお客様に自社の製品やサービスの説明をすることです。
具体的には、携帯電話やインターネットのコールセンターなら、プランの変更受付や、電話機本体やプロバイダ機器の故障受付、または操作案内というのがメイン業務になります。
通販番組や雑誌などの問い合わせを受け持つコールセンターであれば、商品説明から購入受付までを請け負うというのもあります。
商品やサービスによっては、非常に知識が多岐に渡り、一度に覚えられるか不安という意見も聞こえてきそうですが、たいていのコールセンターでは、問い合わせ内容ごとに、部門を設けているので、その会社に存在する膨大な製品やサービスを全て覚えなければならないということはめったにありません。
また、他業種に比べ、研修期間を非常に長く設けているのも、インバウンド・コールセンターの特徴の一つです。通常二週間から一か月、長いところで二か月程度取るところもあります。
また研修とは別に、既存のオペレーターの方のモニタリングして現場状況を肌で感じたり、OJTといって実際にお客様対応をしながらオペレーションを練習する時間が設けたりと、最初の契約期間である2か月なり3か月は、丸々研修をしているうちに終わっていくというのがインバウンド業務の大まかな流れです。
インバウンドのメリット
インセンティブ制度はほとんどの場合ないものの、昇給の頻度が高いというのがインバウンド業務の特徴です。定型の問い合わせに対して、どれくらいの時間で解決まで導くことができるか、満足してもらえるような質を担保した対応ができるか、という二点が主な評価対象になります。
ただし、例外的にリテンション窓口や、通販会社などの物販窓口のコールセンターでは、インセンティブ制度を採用しているところもあります。
電話回線を解約するために連絡してきたお客様に継続のメリットをお伝えして、解約を踏みとどまってもらったり、青汁購入のために連絡してきたお客様に専用のシェイカーを一緒におすすめしご購入してもらえれば、自分にもいくらか入ってくるという仕組みです。
また、これはあまり知られていませんが、電話がないときは、ぼおっとできるというのも隠れた魅力かもしれません。
飲食店やコンビニのアルバイトなどではそうもいかないかもしれませんが、コールセンターの場合、いつ電話が来てもすぐに対応できるように、暇があるからといって掃除や雑務をオペレーターに任せることができないからです。
その他のメリットとしては、求人数が多いというのもポイントです。単純な話ですが、困ったときに仕事が見つかりやすいのは嬉しい条件です。
求人数が多い分、辞めてもすぐに同業他社を見つけられるので離職率が高く、より好待遇になるよう各社が競い合っているというのが現状です。
インバウンドのデメリット
クレームが辛いというのが最たる点でしょう。
しかし最近では、法人向けのコールセンターや、取次専門のコールセンター等、そもそもクレームが発生しにくいデスクでの募集も増えていているので、どうしても気になる場合は、事前に条件面の確認をしておくのことをおすすめします。
一応、個人的な経験から言わせて頂くなら、クレーム対応は対人コミュニケーション能力を飛躍的に成長させることができるある種の教材だと割り切って、せっかくなので経験しておいたほうが社会人としてはお得だと思います。
そもそも一般的なコールセンターには、必ずクレーム専門の担当が在籍しているため、オペレーターに長時間クレーム対応させるということはまずありません。
研修は都度あるものの、覚えることが多いというのはメリットでもある反面、心が重いというのが正直なところかもしれません。
特に未経験で入る場合、一か月間、みっちり朝から晩まで研修を受けてから、現場に入って業務が始まるというのが普通なので、ビギナーの方はある程度もともと自分が知っている商品を取り扱うコールセンターを探すのが良いかもしれません。
インターネットを見られる環境があるということであれば、プロバイダの会社や、PC関連のメーカー、あるいは携帯電話の会社というのもいいでしょう。
私自身、業界で働く中で耳にたこができるほど聞いてきた話なのですが、労働環境としては非常に楽な分、いったん飽きてしまうと転職がしたくなって仕方なくなります。というのも、やはり決まった問い合わせに対して、すでにあるのものを回答としてお伝えするというのが仕事である以上、自分で目標設定ができないと、つい単純作業に感じてしまいがちだからです。
アウトバウンドとは?
アウトバウンド業務とは、お客様に電話連絡をし、会社のサービスや商品を購入、または契約してもらうための提案をする仕事です。
具体的には、インターネット回線の契約営業や、長らく携帯電話を機種変更していない方に新機種購入を促したり、あるいは以前に商品の購入をして頂いたお客様にメンテナンスや修理の提案、または付属品の紹介をするために連絡をするというのが主要なところでしょう。
アンケートなどの情報をもとに、膨大な顧客リストを会社が持っているので、それを端から架けていくというのが業務の主な流れです。
一般のイメージからすると、トークは驚くほどマニュアル化されているため、営業未経験者やコールセンター未経験者でもすぐに慣れることができるでしょう。
またまた研修期間が短いのも、アウトバウンド業務の特徴の一つかもしれません。
どちらかというと、詳細な商品知識よりも、声のトーンや間の置き方で、成約率は変化していくため、とにかく現場に入って慣れていくというのが成績向上の近道です。
意外と初心者にはアウトバウンドの方がおすすめです。
アウトバウンドのメリット
一番のメリットは、なんといってもインセンティブ制度です。完全歩合制とは違い、通常の時給をもらいながら、成約に繋がったらそのうちのいくらかが自分にも入ってくるという流れになっているため、短時間しか入らなくても高額な給料を貰えることもあります。
またインバウンドとは違い、一本当たりの対応時間が短いため、自分のペースで仕事をしやすいというのもポイントの一つです。
ちょっと疲れたら、ドリンクを一口、ヘッドセットを外して首周りのストレッチをいつでもしやすいというのは、長時間働くほどストレスがたまりにくい条件となるでしょう。
ほとんどの人が架かってきた電話をすぐに終わらせてしまうため、インバウンドと比べると、圧倒的にクレームの量も少ないです。
他にも、短時間勤務を受け入れてくれやすいという点もメリットとしてあります。
研修期間が短い分、高度な習熟度を必要とせず、さらに容易に人員を確保できるため、学生やパートなどでの短時間労働者を増やしても業務能率が下がりにくいのです。
アウトバウンドのデメリット
理不尽な怒られ方をしたりはないものの、街頭ティッシュ配りをするような一定の精神的辛さが最も大きいかもしれません。
とはいえ、アウトバウンド業務に共通して発生する問題でもあるため、会社側もそれを理解し、仲間と一緒に仕事をできる環境と、フォロー体制を整えることに日々苦心しているため、世間のイメージほどの辛さはなかった、というのが私の意見です。
まとめ)結局どちらがいいのか?
以上が「【違いを解説!】インバウンド、アウトバウンドとは?」でしたが、いかがでしたでしょうか?
正直に言って、どちらもその人間性によって向き不向きがあるとは思いません。
「大人しい人はインバウンドで、活発な人はアウトバウンド!」という、型にはまった考え方で求人を選んでしまうのはあまりにもったいないと言わざるを得ません。
私はどちらの業務も経験したことがありますが、性格によって、最初から業務不適合を感じたことはありませんでした。
もちろん中には、未だにそういった迷信を信じている派遣担当者を始め、業界でそういった妄言を口にする人がいますが、真に受ける必要はありません。
中長期的に見て、キャリアアップしやすいのは根気を持っている人です。愚直にマニュアルを読み込み、日々の業務を着実にこなす人がどこのセンターでも、高額なインセンティブであったり、更新毎の昇給を獲得していきます。
それに比べれば、要領の良さはあくまで一過性のものです。
未経験で入ると、最初は頭の回転が速かったり、ホスピタリティが高い人を羨ましく思うこともありますが、それだけで十分ではないことがやがてわかるようになるはずです。
むしろ決められた通りにやって一向に上手くいかないという状況が続くのであれば、ひょっとしたらデスクが立ち上がって間もないといった理由で、マニュアルが十分ではない可能性があります。その場合はわざわざ我慢せず、別のコールセンターを試してみればいいというだけです。