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「台本通りにご案内するだけの簡単なお仕事です」
という求人募集の文言、見たことありますか?
ほとんどのコールセンターには、台本があります。
会社によって、「トークスクリプト」、「トークフロー」、「トークマニュアル」等、いろんな呼び方をしていますね。
そして生まれる疑問が、本当に台本を読んでいるだけで、コールセンターの仕事は務まるのか?ということです。
これは結論から言うと、広義のマニュアルという括りで考えると、非常に役立つけれども、人間相手の仕事なので当然読むだけでは仕事になりません。
今回は、そのコールセンターが用意してくれている台本とやらは、どれほど役に立つのかを元コールセンターSVがご紹介していきます。
目次
コールセンターの台本の中身はどんなもの?
冒頭でお伝えした通り、残念ながら読むだけで仕事にはなりません。
そして一般に想像される台本とは、コールセンターにおいては、二つの種別があります。
一つは、文字通り厳密な台詞を指定するト書き台本です。
このト書き台本は、主にオープニングトークから始まって、要件把握から、本人確認に入り、問題解決後の不明点確認からクロージングトークまでの、要所で適宜挿入していく文言が記載されています。
例えばインバウンド業務の場合だと、「お電話ありがとうございます。〇〇の誰それです。本日はどのようなご用件でしょうか?」、
「〇〇ということですね。ご迷惑をおかけしており、申し訳ございません」、
「それでは、ご案内は以上となりますが、他にご不明点はございませんでしたでしょうか?」
「本日は解決のためのお手伝いができて良かったです。誰それがご案内いたしました。またのご連絡をお待ちしております」というような流れですね。
実は、そんなに細かく定めれているわけではなく、あくまで会話の進行に従って挿入が必要とされる文言が用意されているというような考え方です。
当然ながら、これだけで仕事の全てがこなせるわけではありません。あくまで補助的な役割しか持ち得ないのです。
なぜなら、これらはオペレーターの業務負荷を減らすというよりは、ビッグデータから顧客満足率を計算し、顧客が喜びやすい台詞とそのタイミングをマニュアル化したものに過ぎないからです。当然ですが、これがあるから対応が楽になるということはあまりないかもしれません。
(ただし、アウトバウンド業務の場合だと、もっと詳細に最初から最後まで台詞が決まっていることもあります。宣伝や営業目的の架電の場合、洗練された台詞で流れるように話せた方が成約率が高まる商材もあるからです。)
しかし、いわゆる台本というのは、もう一つあります。台本というよりは、マニュアルです。
上のト書き台本はある程度どのような問い合わせにも対応できますが、個別のトラブルシューティングなどについては、シチュエーション別の問診マニュアルが台本として用意されています。
例えば、PCがある日突然、電源が入らなくなったという問い合わせがあれば、
「お手元の電源ボタンが点灯しているかご確認いただけますでしょうか?」、
「続いて、コンセントには正しくケーブルがささっていますでしょうか?」
そして電源ボタン長押しはすでに行ったか、コンセントのさし直しはすでに行ったか等を確認し、全て問題なければ修理相談窓口に電話をそのまま繋ぐというようなマニュアルです。
これらは、お客様の質問や問い合わせ内容に応じて、自分で最適なものを引っ張り出してきて、たいてい上から順に分岐フローに沿って読み上げていけば、解決ないし、解決までの手引きができるというような仕組みになっています。
料金プランの変更にせよ、クレジットカードの紛失受付にせよ、だいたいがこのパターンを踏襲することで、応対が成立するように作られています。
つまり、どの対応にも共通するト書き台本としてのマニュアルを随所に挟み込みながら、個別の問い合わせ内容については、また別の台本を用意してきてそれを読みながら対応するという流れになります。
イレギュラーな質問が出てきたら、台本なんて意味ないのではないか?
もちろんイレギュラーの質問が出てきたり、台本の順番通りに話が上手く進まないことも多々ありますが、正直慣れれば慣れるほどこの台本をただ読み上げているだけで、対応できるようになってきます。
最初のうちは、いかに脱線せずに大筋で台本通りに話の流れを進めていくかの方が課題になりやすいです。
ただし、未経験入社をした場合、この台本を読み上げるだけで一苦労かと言えば、必ずしもそういうわけではありません。
厳密に言うと、「台本通りにご案内するだけの簡単なお仕事です」というよりは、「台本を読み上げることだけに集中すれば、簡単なお仕事です」が正解です。
どういうことかと言うと、とにかく台本にないような話が出てきたときに、余計な寄り道をしないようにすれば、本当に台本は役に立つようになっています。
ベテラン・オペレーターがスムーズに電話対応できる理由というのは、イレギュラーな質問に答えられる知識の豊富さを持っているからではありません。彼らはイレギュラーな質問が出てきても、わからないと言い切ったり、適当に流して台本に話の流れを戻すのが上手いからなのです。
当然の話ですが、台本外の話にすらすらと答えられる人間はそう多くありません。
1年以上続けているようなオペレーターでも、ただ台本を決められた通り、読み上げているだけという人は意外と結構います。
未経験者が台本を意識するうえで気を付けるべきなのは、頑張り過ぎないことです。
台本に書いてないことを聞かれても、わからなくて当たり前!
それより質問の本質的な解決策は、とりあえず台本を先に進めていくことで見えてくるので、なんとか脱線し過ぎないように注意さえしていれば、大丈夫です。
慣れてきたら台本はうざくならないのか?
たしかに、3ヶ月も経てば、大まかな流れは覚えられるので、決められた通りの台詞でトークをするのが面倒になってくることもあります。
特にクロージングトークで「本日は解決のためのお手伝いができて良かったです。誰それがご案内いたしました。またのご連絡をお待ちしております」なんて、まどろっこしくて自分でオリジナルのトークで済ませたくもなるでしょう。
しかしオープニングや、要件把握時、クロージングなどの本当に重要な部分については、アレンジ不可を標榜しているコールセンターが多いです。これは電話対応のクオリティを維持するためです。出たオペレーターによって、対応品質にばらつきが出ないように、なるべく均一なトークをさせようとするのです。
しかし、実はこれは高い顧客満足を得られるというデータの裏付けがあってのことなので、ビジネス・マナーを身体に覚えさせるという意味でも、この一連の流れを台詞ごと覚えてしまうというのも必ずしも悪いことばかりではありません。、間違いなく今後の社会生活にとって有益です。
まとめ)コールセンターの台本は、使いこなせるかどうかが鍵!
以上が「台本のあるコールセンターは、本当に読むだけで仕事になるのか?」でしたが、いかがでしたでしょうか?
上手く使えれば頼りになる補助装置ですが、いい加減な扱いをしてしまうと逆に枷にもなってしまいます。
特に未経験で入社するなら、最初は台本の筋書きから大きく脱線しないように意識して対応をするだけでも、大きな成長に繋がるはずです。
コミュニケーションには型というものがあります。それを覚える訓練だと思えば、こんなにためになる機会はないと言っていいでしょう。